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データ復元と行動履歴分析が行われた公職選挙法違反事件についてまとめてみた

2019年参議院選挙をめぐり、前法相衆院議員、その妻の参院議員の二人が公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕されました。検察当局はこの事案の捜査を進めるにあたり、デジタルフォレンジックを活用したと報じられています。ここでは検察当局がどのように捜査を進めたのかまとめます。

復元したデータと行動履歴の分析

報道によれば逮捕に至るまでにすすめられた捜査は次の通り。

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捜査の流れ

  1. 両議員に関係するPCを押収しデータ復元(2020年1月15日、違法報酬事案)
  2. 両議員のスマートフォンを押収し行動履歴を分析(2020年3月上旬)
  3. 関係するとみられる地元議員らのスマートフォンを任意提出要求しリスト等と突合(2020年3月下旬)
解析された対象物
解析対象 判明した事実
議員会館事務所、地元事務所、自宅で使用されたPC ・押収したPCは複数のデータが削除されていたが検察が復元。現金提供の詳細(名前、金額)リストが含まれていた。
両議員や地元議員らのスマートフォン ・LINEのチャット履歴等を分析。詳細な指示を担当者に送信するも送信されたメッセージの一部が消去されていた。週刊誌報道以降LINEを通じたやり取りもなくなった模様。
・位置情報(GPS)を解析し、行動履歴を解析。地元議員らの任意聴取で解析した情報との突合を行った。
衆院議員の車のカーナビ 設定した履歴を元に行動履歴を分析。
データは専門業者が削除していた?
  • 当初の捜査は昨年10月に週刊誌が報じた違法報酬事案で終わる見込みだったとされる。*1 違法報酬事案の捜査で入手したリストが潮目になったと報じる記事が複数ある。
  • 2019年12月頃に事務所PCのデータを専門業者を通じ削除していた疑いも持たれている。*2 検察は衆院議員が削除した可能性もあるとみている。*3
裁判供述から明らかになった業者への依頼内容
  • 2020年10月19日の東京地裁の裁判で検察が衆院議員が作業を依頼した都内のコンサルタント業者の供述調書の読み上げを行った。
  • 業者とは2016年頃に選挙プランナーを通じて知り合ったとされる。
  • 2019年11月3日(週刊文春報道後)に業者が衆院議員より呼び出され、PCの完全なデータ消去の依頼を受けていた。
  • データ完全消去を行うソフトの紹介を行ったところすぐに購入するよう衆院議員より指示。
  • 衆院議員、業者、秘書らで議員会館事務所、議員宿舎、自宅にあるPCのデータ消去作業を2日間かけ実施。
  • 議員会館での作業を行った際、業者から動作不全により終了していないが十分だと認識し、作業を途中で終了していた。*4
  • データ削除の作業を含めた費用として約83万円が衆院議員が代表の自民党支部から支払いが行われていた。*5
  • データ持ち出しにスタッフが関与している可能性を疑い、PCに監視システムの導入も行っていた。
ブログを使ったネット工作
  • データ消去を行っていた業者はネット工作活動も行っていたことが供述調書より明らかとなった。
  • 参院選広島選挙区で参院議員と争っていた候補者(自民党現職)を批判する投稿等をネット上で行っていた。*6
  • 候補者を支援する自民党広島県連が参院議員をいじめているとする内容もブログに投稿。
  • イメージ悪化の投稿内容は事前に夫の衆院議員が内容を確認していた。

更新履歴

  • 2020年6月26日 AM 新規作成
  • 2020年10月22日 PM 続報反映

*1:局面変えた「買収リスト」聴取された県議は「決めつけ」 ,朝日新聞,2020年6月20日朝刊33面

*2:河井前法相、現金配布リスト削除依頼 家宅捜索前、専門業者に,産経新聞,2020年6月20日

*3:河井前法相 証拠隠しか PC内データ削除の疑い,朝日新聞,2020年6月20日朝刊1面

*4:河井案里議員裁判「元法相から『データ完全消去して』と依頼」,NHK,2020年10月19日

*5:克行被告「流出まずい」、PCデータ消去依頼 業者供述,朝日新聞,2020年10月19日

*6:溝手氏の批判ブログに投稿 克行被告、業者に指示,中日新聞,2020年10月19日