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3万2768時間が経過して発生した石巻市戸籍情報システムの障害についてまとめてみた

2024年2月14日、宮城県石巻市は2023年9月に発生したシステム障害について原因がSSDの重大なファームウエア不具合であったと公表しました。ここでは関連する情報をまとめます。

重大な不具合情報が共有されずシステム障害発生

  • 2023年9月当時にシステム障害が発生したのは石巻市本庁内で稼働する戸籍情報システム。システムが稼働するサーバー上で使用していたSSDの不具合によりバックアップサーバーを含めてシステム停止が起こり、市役所やコンビニなどで戸籍証明書の発行が行えない事態となった。2日後には最新の戸籍証明書の写しは発行できるようになった*1ものの、完全復旧(除籍や改製原戸籍の証明書発行)には約1か月(2023年9月20日~2023年10月18日)を要することとなった。
  • 障害影響が長期化した理由として、市は当該システム上で取り扱うデータが戸籍にかかわるもので、復旧方法および突合などに万全を期するためだったと説明。システム開発の委託を受けていた富士フイルムシステムサービスはバックアップデータからの復旧に時間を要したと説明している。
  • システム障害原因となったSSDの重大なファームウエア不具合の詳細について、市長が2023年12月の本会議で説明した内容によれば稼働時間が3万2768時間を超過すると接続不可となるものだった。*2 この不具合に関する情報について富士フイルムシステムサービスはハードウェアメーカーより同社へ伝達されていなかったとして、不具合情報に関するエスカレーションルール見直しを進めるとしている。

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  • 富士フイルムシステムサービスは今回の不具合の問題は石巻市が利用するサーバーの型番でしか起こりえないものとして他市町村への影響についてはないと説明。一方で保守性を向上させるため同社の戸籍情報システムサーバーを設置している地方公共団体に対して定期的なバックアップ取得の再度の依頼を行うとしている。
2019年に公表された不具合に関連か
  • 石巻市のシステム障害について、ハードウエアメーカーに関する具体的公表等は行われていないが、関連が疑われるものとして、Hewlett Packard Enterpriseは同社のサーバー、ストレージ製品の特定のSAS SSDにおいて、稼働時間が3万2,768時間(約3年9か月)を超えた場合に故障状態(復旧不可)になる深刻な不具合が発生すると2019年11月以降にサポート情報の公開を行っていた*3
  • HPEは障害状態に陥ると、データの回復も行えないことに加え、同時稼働を開始したSSDではほぼ同時に障害が発生する可能性があるとして、HPHD8より前のファームウエアを使用している場合は、修正版の更新を早急に行うよう強く推奨していた。

関連タイムライン

日時 出来事
2023年9月20日 石巻市の戸籍情報システムでシステム障害が発生。
2023年10月18日16時半 戸籍情報システムの障害が完全復旧。戸籍関係の証明書発行を再開。20日まで受付時間を19時まで延長。*4
2023年11月14日 石巻市が戸籍情報システムが全復旧したと公表。
2023年12月11日 石巻市議会 本会議でシステム障害について市長が陳謝。
2024年2月14日 石巻市が障害原因について公表。

更新履歴

  • 2024年2月21日 AM 新規作成
  • 2024年2月21日 AM HPEのサポート情報公開日を修正(2021年→2019年)