前職のデータベースに週末アクセス繰り返し不正発覚した事案についてまとめてみた

2023年9月28日、警視庁は双日の元従業員の男が前職の兼松から営業機密を不正に持ち出したとして不正競争防止法違反の容疑で逮捕したと発表しました。ここでは関連する情報をまとめます。

元同僚から認証情報を聞き出し不正入手か

不正競争防止法違反’（管理侵害行為）の容疑で逮捕されたのは双日元従業員の男。2022年7月16日21時から17日1時5分頃、自宅のPCから男の前職である兼松のデータベースに元同僚の認証情報を使用してログインし、一部の社員しかアクセスのできない3点の営業秘密情報（海外の自動車メーカーとの取引台帳、自動車新製品開発に関連する提案書、採算表）をダウンロードしPCに保存した疑い。男は容疑を否認している。*1 *2 *3
男は前職の兼松で自動車部品の取引部門に所属。転職先の双日でも自動車関連の担当をしていたが、完成車の担当となる取引が多かったことから前職との業務内容は重複していなかった。
兼松のデータベースのログインに使用した認証情報は、兼松の同僚だった派遣社員に対して「自分がまとめた海外の出張先飲食店リストが欲しい」などと実際には存在しないリストの口実を作り退職後に依頼して聞き出したもの。派遣社員は男にログインに必要なID、パスワードに加え確認コードも伝えていた。*4 任意での聴取に対し「上司、同僚から聞けないため派遣社員に頼んだ」と男は供述。*5 *6 *7
男は3点の営業機密情報の不正入手以外に、退職直前に兼松が利用しているオンラインストレージサービスから3万7000件のファイルをダウンロードしていた形跡が確認されており、警視庁はこれらが営業機密に該当するか捜査している。*8 *9 ただし、これらファイルは転職後別のPCではセキュリティ上の問題で開くことができなかったため、男は双日の別の部署の従業員に対して開くことができないかと相談を持ち掛けていた。*10
兼松は社内調査を通じて男の不正行為を把握。アクセス記録より大量のデータの持ち出しが行われていたことが確認された。捜査関係者によれば、男は同社の従業員の多くが休む週末（土日）にデータベースに対してアクセスを繰り返しており、単一アカウントから多数のアクセスが行われていたことが異常として検知された。*11
双日は男の逮捕を受けた発表を行っており、中途入社の社員に対して前職の営業機密の持ち込みを同社へ行わないよう明記した誓約書を交わしていると説明。また組織的な関与も把握していないとした。転職後に双日の社員へ兼松から持ち出したものとみられる画像データを見せていたが、見せられた社員は内容を理解しなかった。*12 また兼松も本事案に関連した発表を行っており、不正利用や第三者への漏洩などは確認されていないとした。*13 兼松も男が退職する際に内部情報の持ち出しを行わないよう通知を行い、誓約書を提出させていた。*14

日付	出来事
2014年4月	男が兼松に入社。
2022年6月	男が兼松を退職。
2022年7月	男が双日に入社。
2022年7月16日	男が自宅PCから兼松のデータベースにログインし営業機密を取得した疑い。
2022年9月	兼松の社内調査により男の不正行為が発覚。兼松が警視庁へ被害相談。
2023年4月	警視庁が不正競争防止法違反の容疑で双日本社、男の自宅を家宅捜索。
2023年5月	男が双日を退職。
2023年9月27日	警視庁が男を不正競争防止法違反の容疑で逮捕。
2023年10月18日	東京地検が男を不正競争防止法違反で起訴。