HOYAのシステム障害についてまとめてみた

2024年4月4日、HOYAは同社グループにおいて3月30日にシステム障害が発生しており、その原因について不正アクセスに起因する可能性が高いと公表しました。HOYAは国内トップのレンズメーカーで、障害により取引先である眼鏡チェーン各社にも一部販売見合わせなどの影響が生じました。ここでは関連する情報をまとめます。

複数事業所でシステム障害

海外の事業所で不審な挙動がシステムで確認され調査した結果、HOYAグループ国内外の事業所においてシステム障害が発生していることが判明。直ちに障害発生が確認されたサーバーの隔離などの対応を実施。
外部専門家を交えた調査の結果、何者かによる同社サーバーに対する不正アクセスに起因し生じた可能性が高いと同社は判断。機密情報、個人情報などの流出の可能性について調査を進めた結果、グループ内の特定のサーバーにアクセスし、ファイルの一部が窃取されたことを確認した。窃取された可能性のあるファイルについては、個人情報の有無について確認をするために外部のデータ分析専門の企業へ内容の分析依頼を行った。
外部からはランサムウエア被害の可能性について指摘する報告もあり、Hunters Internationalが同社に対して1000万ドル相当の身代金を要求しているとする記事も出ているが、5月15日時点の公表ではランサムウエアに関連する不正アクセスであったかについて同社は言及をしていない。*1

取引先だけでなくレンズ製造他社にも影響波及

システム障害の期間は3月30日に発生してから概ねシステムの復旧が完了となる4月23日までの24日間に及んだ。障害の影響を受け、HOYAが眼鏡レンズや医療品、ハードディスク向け、半導体関連など複数製品について生産工場内のシステムが停止した。*2 在庫出荷等は手動で対応する方針で目途は見えてきていると取材には回答しつつ*3、同社グループ会社のHOYAビジョンケアグループによれば注文済み特注レンズの納期通りの出荷が困難であり、さらに新規の受付も停止していると案内をしていた。*4 同社によれば業績への影響は5月15日時点でメガネレンズ事業の2024年成長率の低下、年間売り上げの前年比フラットと評価している。また具体的な影響範囲（生産停止している製品名など）については取材に対しセキュリティの観点から外部公表しない方針と説明している。*5 *6 *7

HOYAが出資するセイコーオプティカルプロダクツもレンズ供給に大幅な遅延が生じていると公表した。原因は同社の基幹工場における製造システムの障害としている。なお、レンズ製造に必要な情報以外のデータを使用していないことから同社では個人情報への影響はないと説明する。*8 また同業界の日本レンズ工業においては、今回のシステム障害の影響を受け自社製品の納期遅延が生じたとして取引先に対し4月4日時点では通常納期より4日程度遅延すると案内を行っている。*9日本レンズ工業はHOYA以外の企業に発注が行くことから、レンズメーカー全体の納期遅延が生じていると取材に回答している。*10
同社と眼鏡レンズの取引をしている販売企業に販売停止などの影響が出た。JINS*11やZoff*12 は、オンラインショップを含む全店舗または一部の店舗において、曇り止めレンズやブルーライトカットなど一部レンズについて2024年3月31日以降一時的に取り扱いを停止すると公表。眼鏡市場（メガネトップ）をはじめ複数の販売店で同様に一部レンズの納期に遅れが生じていると案内している。*13 *14 *15 *16 *17 *18 *19 *20 *21 *22 *23 *24 *25 *26 *27 *28 *29 *30 *31 *32 *33 *34 *35 *36
4月12日にはHOYAから取引先へ累進屈折力レンズなどの一部商品の再開、15日には対象商品を拡大すると通知を行った。*37当時復旧時期など社内で目途をつけているとしているが、情報がまとまり次第公表する方針と同社は取材に答えていた。*38JINSやZoffなど一部販売店では販売再開の案内を行っているが発注が集中していることから一部の商品では納期遅れが継続する見込み。*39 *40 4月23日時点で同社の事業所の多くがシステム復旧を完了し、一部で受注残対応により納期延長などが残るものの正常に戻りつつあると説明した。