piyolog

piyokangoの備忘録です。セキュリティの出来事を中心にまとめています。このサイトはGoogle Analyticsを利用しています。

独自の製造技術情報を中国企業へ提供したとみられる事案についてまとめてみた

2023年10月5日、兵庫県警は日本山村硝子から営業秘密情報を持ち出したとして不正競争防止法違反の容疑で男女二人を逮捕しました。男は同社の元社員で不正に持ち出された情報は中国企業に流出した疑いがあるとも報じられています。ここでは関連する情報をまとめます。

妻の会社を通じて不正取得した情報を提供か

  • 不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の容疑で逮捕されたのは日本山村硝子の元社員であった男とその妻の二人で両者とも日本に帰化した元中国籍。2016年6月28日19時5分頃に会社の営業秘密に当たる情報(日本山村硝子が独自に開発した超軽量ガラス瓶の成形技術(二酸化炭素削減につながる)に関連するプログラム)を妻と共謀し外部に持ち出しした疑い。 男は前の話は覚えていない、妻は犯罪に関わることはしていないと二人とも容疑を否認している。*1
  • 男は中国語に堪能であったことから2016年在職当時中国担当のチームに係長級として所属し、ガラスびん技術関連の営業、通訳を担当していた。また妻はガラス技術を扱うコンサルティング企業「アズインターナショナル」の社長だった。
  • 流出先とみられる中国のガラスメーカーは事件以前、日本山村硝子と技術支援契約を締結していたが契約を打ち切られた。その後、妻の会社は中国のガラスメーカーと技術ライセンス契約を締結。その直後に男は中国またはその周辺国から社内メールサーバーに接続し、社用アドレスから自身の個人アドレス宛に情報を送り不正に複製を行っていたとみられ、中国企業からは妻の会社口座に対し2016年から2021年の5年間で計約1億8960万円相当の中国元が振り込まれていた。*2 *3 *4 *5
  • 不正行為の発覚は日本山村硝子しか製造できないはずの超軽量ガラス瓶を中国のガラスメーカーが製造していたことから。同社は内部調査を実施し、男を懲戒解雇処分とした。また兵庫県警に被害相談を行っていた。兵庫県警は他の共謀者の有無や情報提供先を捜査している。*6
  • 二人の逮捕を受け日本山村硝子もプレスリリースを出しており、個人情報や取引先に関連する情報などの持ち出しや、同社のシステム・ネットワークに対する不正アクセスについては否定した。*7
  • 兵庫県警によれば、不正競争防止法の公訴時効は7年となるが、二人とも時効が停止する海外滞在期間があったことから今回の逮捕となった。*8

関連タイムライン

日時 出来事
2003年 男が日本山村硝子に入社。
2013年5月 男が中国担当のチームに配属。
2016年5月 妻の会社と中国のガラスメーカーが技術ライセンス契約を締結。
2016年6月28日 男が営業秘密にあたるプログラムを取得し外部へ送信した疑い。
2016年8月から2021年4月 中国企業から妻の会社口座に対して20回にわたり1億8960万円の振込。
2022年6月 中国企業が超軽量ガラス瓶を製造しているとして日本山村硝子が社内調査を実施し、男の不正行為が発覚。
2022年11月 日本山村硝子が男を懲戒解雇処分。
2023年2月 日本山村硝子が兵庫県警に被害相談。
2023年10月5日 兵庫県警が男と妻を不正競争防止法違反の容疑で逮捕。

更新履歴

  • 2023年10月7日 AM 新規作成
  • 2023年10月7日 PM 誤記修正(中国企業からの振込金額)
  • 2023年10月18日 AM 続報反映(妻のコンサル企業の情報等)