2023年1月11日(現地時間)、米連邦航空局(FAA)はシステム障害の発生によって航空情報の提供に支障があるとして一時的に米国内線全てのフライト停止の命令を航空各社に行いました。この命令を受け米国内では同日多数のフライトに影響が及びました。ここでは関連する情報をまとめます。
システム障害で米国内1万便以上の運航に影響
The FAA is working to restore its Notice to Air Missions System. We are performing final validation checks and reloading the system now.
— The FAA ✈️ (@FAANews) 2023年1月11日
Operations across the National Airspace System are affected.
We will provide frequent updates as we make progress.
- FAAが運用するシステム障害の影響により、フライトと安全性に関する情報の完全性を検証をできるようにするため、2023年1月11日7時15分(米国東部標準時)にFAAが航空会社に対して、同日9時(米国東部時間)まで米国内のフライトを一時的に全て停止するよう命令を行った。その後8時50分頃にこの停止命令の解除が行われた。*1*2
- 一時停止の影響は翌日12日に正常に戻ったとFAAはコメントしている*3が、命令が発せられた11日は合計1万1300便以上の遅延、欠航が発生*4し、全米規模の運航トラブルは9.11テロ以来20年余りぶりと報道。*5
- 一次運航停止命令が出た11日当日は米航空会社はこの命令を受けた反応をTwitter等で行っていた。最も影響を受けたとみられるサウスウエスト航空では運航全便の内半数以上で遅延が生じた。
影響が及んだ主な航空会社 | 1/11の欠航件数 | 1/11の遅延件数 |
---|---|---|
サウスウエスト航空*6 | 429件(10%) | 2,118件(54%) |
アメリカン航空*7 | 228件(7%) | 1,755件(59%) |
ユナイテッド航空*8 *9 | 96件(4%) | 1,369件(59%) |
デルタ航空*10 | 58件(2%) | 1,271件(44%) |
JetBlue*11 | 17件(1%) | 365件(38%) |
アラスカ航空*12 | 7件(0%) | 169件(23%) |
スピリット航空*13 | 10件(1%) | 422件(52%) |
(遅延・欠航の件数はFlightAwareより引用)
早朝の命令はシステム再起動のためか
- 一時停止の発端となったシステム障害はNOTAM(Notice to Air Missions)と呼ばれるシステムで1月10日15時頃に発生したことによるもの。NOTAMは航空管制とは別のシステムで、FAAが航空会社に対し安全な運航に関係する情報(例えば滑走路の閉鎖、要人の飛行、空域制限を伴う軍事演習等)を通知する際に使用される。
- 予備的な調査を通じてシステム障害はデータベースファイルの破損が原因だったことが判明した。*14 *15 その後の調査で、プライマリとバックアップのデータベース同期メンテ中に契約担当者が意図せずファイルを削除したことが判明した。*16 *17
- FAAはシステム障害を受け同日未明にシステムの再起動を決定。再起動は約90分の時間を必要とするものだったため、フライト数が少ないタイミングの早朝に計画された。*18 しかし再起動後も問題は完全に解消されなかった模様。 *19
- NOTAMはカナダでも運用されており入力系のシステムで同時期に別の障害が発生していた(米国東部標準時で10時20分頃から13時15分頃まで)が、航空機の運航影響は生じていないとNAV CANADAは公表している。*20
サイバー攻撃の証拠は確認されず
- サイバー攻撃の証拠は確認されていないがその可能性は排除できていないとして、FAAやホワイトハウス、米運輸省それぞれTwitterへ投稿するなどして声明を行っている。*21
関連タイムライン
日時 | 出来事 |
---|---|
2023年1月10日15時頃 | NOTAMでシステム障害が発生。 |
2023年1月11日未明 | FAAがNOTAMの再起動を決定。 |
同日 7時15分頃 | FAAが航空会社に対して9時まで米国内線のフライト一時停止を命令。 |
同日 7時半頃 | 大統領がFAAより説明を受け、現時点でサイバー攻撃の証拠は確認しておらず、運輸省に対して詳細な調査を指示したとホワイトハウス報道官がTwitterへ投稿。*22 |
同日 8時50分 | システム復旧の進捗に伴い、FAAがフライトの一時停止命令を解除。*23 |
同日 9時前 | 米運輸長官がシステム障害の影響が解消され、命令解除が間もなく行われるとTwitterへ投稿。 |
同日 18時30分頃 | FAAがシステム障害の原因について言及。サイバー攻撃の証拠は確認していないとコメント。 |
2023年1月12日 | FAAが通常の状態に復旧したと宣言。 |
2023年1月20日 | FAAが契約担当者による意図しないファイル削除であったことが判明したと発表。 |
更新履歴
- 2023年1月14日 AM 新規作成
- 2023年1月20日 PM 続報反映(FAA続報発表)
*1:FAA outage: Damaged database file took down safety system, grounding flights,NBC,2023年1月12日
*2:米国の全フライトが一時停止、原因となったシステム障害が浮き彫りにした積年の課題,Wired,2023年1月12日
*3:https://twitter.com/FAANews/status/1613565011296657409
*4:NBCニュースなどを見るにFlightAwareの件数を参照している模様。
*5:米国内線運航は12日に正常化、FAAのシステム障害で一時大混乱,Reuters,2023年1月13日
*6:https://twitter.com/SouthwestAir/status/1613144484014968840
*7:https://twitter.com/AmericanAir/status/1613150946196099074
*8:https://twitter.com/united/status/1613142319473070080
*9:https://twitter.com/united/status/1613180236400558082
*10:Delta teams safely managing impact of FAA ground stop; waiver issued for customers
*11:https://twitter.com/JetBlue/status/1613161194877227009
*12:https://twitter.com/AlaskaAir/status/1613161832948314112
*13:FAAの一連のツイートをRTしていることから影響ありと判断。
*14:https://twitter.com/FAANews/status/1613317775132336129
*15:米連邦航空局システム障害の原因はデータベースファイル破損、空港内の混乱は解消,日経クロステック,2023年1月13日
*16:FAA links computer outage to procedural error as U.S. flights return to normal,Reuters,2023年1月13日
*17:米航空便の混乱、職員が手順守らずにファイル破損か 運用は通常復帰,朝日新聞,2023年1月13日
*18:A corrupt file led to the FAA ground stoppage. It was also found in the backup system,CNN,2023年1月12日
*19:REVEALED: Corrupt file and system REBOOT caused all US flights to be grounded for first time since 9/11: NOTAM system and backup were both infected with corrupt file - as pilots slam 'ridiculous' decision to ground planes,MailOnline,2023年1月12日
*20:https://twitter.com/navcanada/status/1613228759875784705
*21:Buttigieg: No indication of ‘nefarious’ cause of FAA outage, but ‘not yet prepared to rule that out’,NBC,2023年1月12日
*22:https://twitter.com/PressSec/status/1613153561289932800
*23:https://twitter.com/SecretaryPete/status/1613172396571201536