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危険物が製造された複数の事件についてまとめてみた

2018年夏以降、爆発物など危険物の製造に関与していたとして元大学生や高校生など3人が検挙されました。ここでは関連する情報をまとめます。

複数の事件概要と登場人物

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危険物製造を摘発した複数の事案に関連し逮捕や書類送検されたのは3名。

  登場人物 容疑・判決(報道で確認できたもの)
A 愛知県名古屋市緑区 19歳 男性 元大学生 爆発物取締罰則違反(製造、所持)
銃刀法違反
覚せい剤取締法違反
武器等製造法違反(無許可鉄砲製造)
B 茨城県古河市 18歳 自称派遣社員 男性 覚せい剤取締法違反(製造)
C 東京都 16歳 男子高校2年生 火薬類取締法違反
原子炉等規制法違反(4/10時点で捜査中)

タイムライン

複数の事案をタイムラインにまとめると次の通り。

日時 出来事
2015年 Aが高校2年途中から化学系部活へ所属。
2016年12月 A(当時高校生)が自宅でTATPを製造
2017年9月頃 Aが自宅で3Dプリンターを用いて樹脂製拳銃を製造。
2017年11月 ヤフオク!にウラン99.9%と書かれた商品が出品。Cを含む複数人が落札。
同月 原子力規制庁職員がウランとみられる商品のネット出品を発見。
2018年1月 原子力規制庁から警視庁へウラン疑念物出品の情報提供。
2018年2月頃 AとBがネットで交流を開始。*1
2018年3月19日夜 Aが名古屋市内公園で爆破テスト。
直後 ドーンという爆発音が鳴り響き119番通報。
愛知県警がAから任意の事情聴取。
2018年4月 愛知県警がAの自宅を捜索。
2018年6月頃 AとCがネットで交流を開始。*2
2018年8月19日、20日 Cの自宅でETNを製造。*3
2018年8月20日 愛知県警がAを爆発物取締罰則違反(製造、所持)容疑で逮捕。
2018年9月 愛知県警捜査本部が押収した危険物の再現実験を実施。
2018年9月7日 Aを銃刀法違反の容疑で再逮捕。
2018年9月27日 Aを覚醒剤取締法違反の容疑で再逮捕。
2018年10月2日 警視庁、愛知県警がC自宅など関係先の捜索。
2018年10月6日 愛知県警がAを武器等製造法違反の容疑で追送検。
2018年10月17日 愛知県警がAを複数の非行事実から名古屋家裁へ送致。
同日 Aが大学を自主退学
2018年10月31日 Aを覚醒剤取締法違反容疑で追送検。
2018年11月6日 Bを覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕。
2018年11月13日 名古屋家裁がAは刑事処分相当として検察官送致を決定。*4
2018年11月22日 名古屋地検はAを7つの罪で起訴。
2018年12月 警視庁は日本原子力研究開発機構へウランかどうかの鑑定依頼*5
2019年1月21日 名古屋地裁でAの初公判。*6
2019年2月19日 名古屋地裁でAの公判。
2019年3月25日 名古屋地裁がAに対し、3年以上5年以下の実刑判決。
2019年4月8日 Cを火薬類取締法違反容疑で書類送検。

発端は市内公園夜で起きた爆発音

  • 3月19日夜に名古屋市名東区公園で爆発音がしたと通報。
  • 地面の一部に焦げた跡が残っていた。
  • 現場に残っていた容器からTATPの成分が検出された。
  • 報道によれば元大学生が感度実験としてTATPを燃焼。
  • 元大学生とみられるSNSアカウントは引越しに邪魔で処分したと説明。
  • 同アカウントでは生成後に後悔していたとも投稿。

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製造された危険物

製造物 製造者
樹脂製拳銃1丁(3Dプリンター利用)*7 元大学生
手製の手投げ爆弾 元大学生
過酸化アセトン(TATP) 元大学生(約57.4グラム所持)
四硝酸エリスリトール(ETN) 元大学生
男子高校2年生(2.4グラム製造)
覚せい剤を含む液体 元大学生(0.612グラム製造)
18歳男性(原料の一部郵送)
ウラン精鉱(イエローケーキ) 男子高校2年生
  • 手投げ爆弾は爆発すると散らばる金属片が仕込まれていた。
  • TATPは別名「サタン(魔王)の母」と呼ばれ、ISもよく利用していた模様
  • 覚せい剤の原料は市販のぜんそく薬にも含まれる。
  • 樹脂製拳銃はインターネットからダウンロードした設計図より組み立てたもの。
  • 発射出来ず自身で改造。警察鑑定から殺傷能力があると認められた。
  • イエローケーキは出品当時にも話題になっていた。

危険物製造の動機・供述

A (爆発物製造に対して)威力を確かめたかった。
(樹脂製拳銃製造に対して)悪いことはするつもりはなかった。
(覚せい剤製造に対して)興味本位で市販薬から製造した、銃器等の製造資金欲しさから及んだ
B (Aが)製造に及んでいたことを知っていた。事実は概ね正しい。
C 科学に興味があり、知識として製造方法を確認したかった

薬品取扱コミュニティで情報共有

  • 元大学生や男子高校生を含む数名で情報共有を行っていた。*8
  • 男子高校生は元大学生からETNの製造方法を聞き出し。
  • Twitter、Lineを使って共有。*9
  • Twitterでは「警察がきそうなもっとやばい実験やりましょーね」と煽り投稿もしていた。
  • LINEでは製造方法、実験動画などが共有されていた模様。
  • SNSからは製造状況の具体的な報告記録などが確認されている。
  • いずれもインターネット上で連絡を取り合っており、直接の面識はなかった模様。

その他の関連情報

(A)愛知県名古屋市19歳
  • Darkwebから爆発物や拳銃の知識を得ていた可能性がある。*10
  • 所有するPCの解析から覚醒剤、樹脂製拳銃の製造が明らかとなった。
  • TATPを製造した16歳当時は化学系の部活に所属していた。
  • TATPの原料はAが当時通っていた高校から持ち出していた。
  • 覚せい剤は市販薬から製造した。
  • SNSでグラムあたり13000円で購入すると持ち掛けらたことがきっかけとされる。*11
  • 公判では社会復帰後学業への復帰意向を示していた。
(B)茨城県 自称派遣社員 18歳
  • 役割分担しAに対して覚醒剤の製造に必要な原料の一部を郵送。*12
(C)東京都 16歳
  • 家宅捜索で2.4グラムのETNを押収。起爆装置は発見されず。
  • ETNは市販の薬品で製造が可能でインターネットから購入。
  • ETNの調合に必要となる複数の原料(希硫酸、硝酸カリウムなど)残分を任意提出。
  • 2017年11月インターネットオークションサイトより微量のウランを購入。*13
  • オークションサイトはヤフオク!商品ページには「ウラン99.9%」などと記載されていた。
  • 高校生がオークションサイトから購入したのはこの「劣化ウラン」
  • オークションサイトで販売された劣化ウランは警視庁が全て押収。
  • 劣化ウランの男子高校生以外の購入者は警察が捜査中。
  • 別で購入した天然のウラン鉱石から不純物を取り除いたウラン精鉱を精製
  • 精製物はオークションへ出品販売や同級生に渡していた。
  • 警視庁は押収したウランが規制法に抵触するか原子力規制庁に確認をする方針。

更新履歴

  • 2019年4月13日 PM 新規作成

*1:爆薬事件、新たに少年逮捕 愛知県警 覚醒剤製造の疑い,日本経済新聞,2018年11月6日夕刊

*2:名古屋の元学生に逐次報告=爆薬製造状況、SNSで-書類送検の高校生・警視庁,時事通信,2019年4月10日

*3:爆薬製造容疑の高校生 ウランのネット売買にも関与か,毎日新聞,2019年4月10日

*4:爆薬製造の19歳を逆送 「刑事処分が相当」名古屋家裁,朝日新聞,2018年11月15日

*5:ネットでウラン売買か 出品・購入者特定し押収,日本経済新聞社,2019年1月31日

*6:元大学生、爆薬製造認める 名古屋地裁初公判,産経新聞,2019年1月21日

*7:3Dプリンター銃を所持容疑 爆薬製造の大学生を再逮捕,朝日新聞,2018年9月7日

*8:爆薬製造容疑、16歳書類送検 名古屋元学生とやり取り,朝日新聞,2019年4月8日

*9:爆薬、SNSで助言受け製造 困難な事前察知,産経新聞,2019年4月8日

*10:爆薬製造・銃所持容疑で逮捕 大学生「覚醒剤も自作」 所持の疑い,朝日新聞,2018年9月28日朝刊

*11:「覚醒剤販売も計画」 家裁、爆薬事件で元大学生逆送 ,日本経済新聞,2018年11月13日

*12:覚醒剤つくった疑い、少年逮捕 元学生へ材料の一部郵送,朝日新聞,2018年11月6日

*13:爆薬製造容疑の高校生、ウランも売買か 自宅で精製疑い,朝日新聞,2019年4月10日