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なりすまし申請による特別定額給付金詐欺事件についてまとめてみた

石川県能登町の住人になりすまして申請を行い、特別定額給付金をだまし取った事件が発生しました。その後、愛知県名古屋市の男が7月5日に詐欺等の容疑で逮捕され、28日に起訴されています。ここでは関連する情報をまとめます。

マイナンバーカードが必要な申請で詐欺被害

  • 名古屋市の男が石川県能登町の男性になりすまし、特別定額給付金の申請を行った。
  • 能登町は男の申請に基づき指定の口座に振り込みを行ってしまった。
  • 男はマイナンバーカードが必要なオンライン申請、申請書面が必要な郵送申請ともになりすまして申請を行っていた。
  • なりすまされた本人が申請後に給付金が振り込まれないことから町に問合せを行い事件が発覚した。*1

報じられた能登町住人の被害は以下の通り。

被害住人 被害金額と申請方法
男性A 50万円(オンライン申請)
男性B 50万円(オンライン申請10万円、郵送申請40万円)
  • 石川県警珠洲署は2020年7月8日に男を詐欺等の容疑で逮捕。7月28日に金沢地方検察庁輪島支部は詐欺と有印私文書変造・同行使の罪で男を起訴した。*2

1.何故オンライン申請ができたのか

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ぴったりサービスでオンライン申請
  • 特別定額給付金のオンライン申請は申請者本人のマイナンバーカードでなくてもできるため。
  • 男はなりすまし対象の男性Aの世帯情報に申請情報を書き換えオンライン申請を行っていた。申請に必要なマイナンバーカードは自分のカードを使用していた。(申請者情報は自動入力されているが自分で変更可能)なりすまされた男性はマイナンバーカードは所有していなかった。
  • 能登町は国のマニュアルに従い複数の職員で本人確認を行ったと説明。不備がある場合は対策を検討する必要があると取材に答えている。*3
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なりすましオンライン申請の概要
同姓同名対象に複数自治体に申請か
  • 東日本の自治体では同姓同名の男性の情報で特別定額給付金10万円のオンライン申請が行われており、同様の手口で同姓同名の人物になりすまし全国の自治体に男がオンライン申請を行っていたとみられている。
  • 申請を受けた別の自治体では、(既に本人が受給済でもあったが)申請された情報と署名用電子証明書に含まれる基本4情報(住所や生年月日)を突合させることで本人確認していたため、男に対し不受理の通知を行っていた。

2.何故郵送申請ができたのか

  • 男性が自治体に送付した郵送申請書類を男が入手し自分の口座情報に書き換えて再申請を行ったため。
  • 男性の書類に不備があり、能登町は書類を返送。返送された書類が男の住所へ転送されていた。*4
  • 男は事前に日本郵便のe転居で男性の郵送物を自分宛に転送させるよう不正な申請を行っていた。
  • 郵送申請で騙し取られたのは男性の家族4人分40万円だが、男性本人の給付金も男がなりすまして行ったオンライン申請により10万円分騙し取られていた。
  • 書類の訂正方法は該当箇所を2本線で訂正したのみ。訂正印も押されていなかった。*5
  • 男性に対し郵便局員が事実確認のため訪問しに来ていたが転送届を悪戯か何かと判断。郵便局側もそれ以上の対応は取られなかったという。
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なりすまし郵送申請の概要

この件と関連はないがe転居を悪用したストーカー事件も発生している。
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まだ不明な点も

  • 男が行ったなりすまし申請は世帯情報等のなりすましをする相手の情報が必要となる。
  • 全国の自治体に同様の申請を行っていたらしく、男がどのような手段でこれらの情報を得たのかは8月1日時点で明らかになっていない。

更新履歴

  • 2020年8月1日 AM 新規作成