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令和8年熊本地震に乗じたSNS上の偽情報についてまとめてみた

2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生し(出典:1)、気象庁はこの地震とそれ以降に発生した一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しました(出典:2)。発生直後からSNS上では、地震の原因を人為的なものとする言説、生成AIによる偽の被害映像、被災者を装った偽の救助要請・送金要求など、多岐にわたる偽情報・デマの拡散が相次いで確認され、政府は注意喚起を行うとともに、主要なSNS等プラットフォーム事業者に対応を要請しています。ここでは確認されているケースを中心に関連する情報をまとめます。

確認されている偽情報

地震発生後にSNS上で確認された偽情報・デマは、内容・投稿先・検証状況を含めて次のとおり。

内容 確認された場所 検証・否定の状況
電磁波・浅い震源・地震雲を根拠とする「人工地震」説 XなどのSNS 日本地震学会がFAQで「現実的ではない」と説明(出典:11, 12, 18)。日本ファクトチェックセンターが個別に検証し「誤り」と判定(出典:14)
「阿蘇山が噴火した」「震源は阿蘇山」 SNS 気象庁によれば震源は熊本地方(出典:19)
「地震を予測し、場所は的中した」との投稿 X NHKは根拠のない「予測」の投稿と報道(出典:19, 20)
イオンモール熊本の爆発を映した生成AI偽動画(自撮り映像・建物倒壊映像) SNS 越前功教授(国立情報学研究所)がAI生成と判定(出典:21)
報道機関のニュースを装う生成AI偽動画 YouTube NHKが生成AIによる偽動画と報道(出典:22)
能登半島地震や過去の震災の映像を今回の地震の映像として転用 X、スレッズ スペクティ社の分析、FNN・NHKの取材で判明(出典:15, 21, 22)
「ななつ星」脱線 X JR九州が否定(出典:19)
海外で撮影された画像を使った「ライオンが放たれた」との投稿 SNS(投稿先不明) NHKによれば一時投稿され、その後削除(出典:19)
イオンモール爆発を「意図的」「ミサイル・核攻撃」とする陰謀論的投稿 X コミュニティノートが付与(出典:3)。竜口氏が拡散を確認(出典:16)
実在しない住所を記した偽の救助要請(文面がほぼ同一の複数アカウント) X NHKによれば記載の住所は実際には存在せず、投稿は閲覧不能に(出典:22)。スペクティ社が同一文面の複数投稿を確認(出典:15)
QRコード・PayPayによる送金要求 SNS スペクティ社、竜口七彩氏(Japan Nexus Intelligence)が確認(出典:15, 16)
「外国人が引火させた」との主張 X、スレッズ NHKは根拠のない主張と報道(出典:22)
地震前投稿の掘り起こし(特定の宗教を非難する投稿、「避難所で豚汁を止めよう」等) スレッズ、X nou_yunyun氏が「豚汁」投稿の元ネタを地震前(7/26)のものとみている(出典:17)。竜口氏も掘り起こしのケースを確認(出典:16)
生成AIの回答を根拠に、本物の可能性が高い現場の映像を過去のものだと断定して拡散 SNS スペクティ社が今回の地震で特徴的な動きとして指摘(出典:26)

地震の原因を人為的なものとする言説

弁護士ドットコムニュースの報道によれば、地震発生後のSNSには「上空に強力な電磁波をかけている」「震源の深さ10kmの浅いものは人工地震を疑ってよい」「雲が証拠だ」といった投稿や、高市首相の投稿への返信で政府が地震を引き起こしたと主張する投稿が相次いで確認された(出典:18)。同様の投稿は読売新聞オンラインやFNNプライムオンラインの取材でも確認されている(出典:20, 21)。公益社団法人日本地震学会は2026年3月公開のFAQで、秘密裏に人為的に大きな地震を起こして特定の地域に被害を生じさせることができるかという問いに対し、地表に被害をもたらし得るマグニチュード7以上の地震を想定したうえで、(1)深さ10km以上の孔を掘るには多大な時間と経費が必要(2)そのような深さの孔を秘密裏に掘るのは困難(3)M7以上の規模の地震を起こすエネルギーを発生させるのは困難、との理由から「このような地震を人為的に起こすのは現実的ではありません」と説明している(出典:11)。地震雲についても、同学会は2019年10月修正のFAQで「地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています」との見解を示している(出典:12)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2026年7月30日、「上空に強力な電磁波を掛けて、雲が局所に変形して集まるのはHAARPによる人工地震の特徴」などとする投稿を検証し「誤り」と判定した。気象庁の「雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です」との説明を根拠に挙げたほか、雲研究者で気象庁気象研究所主任研究官の荒木健太郎氏がX投稿(2026年7月29日)で「雲は地震の前兆にはなりません」と述べていることも紹介した(出典:14)。

気象庁は第3報で、震源の深さを速報値の約10kmから16km(暫定値)に更新し、震源周辺には布田川断層帯・日奈久断層帯が存在するとした(出典:1)。NHKの取材によれば、「阿蘇山が噴火した」「震源が阿蘇山だ」とする投稿も出ていたが、気象庁によれば震源地は阿蘇地方ではなく熊本地方である(出典:19)。

日本地図の画像とともに「予測を発表し、場所は的中した」などとする投稿も拡散し、NHKの取材によれば28日20時05分時点で300万回以上、読売新聞オンラインの取材によれば同日21時15分時点で340万回以上、それぞれ閲覧された*1(出典:19, 20)。NHKの取材によれば、投稿しているのは根拠のない地震の「予測」を毎日のように投稿しているアカウントだという(出典:19)。読売新聞の取材に対し、日本ファクトチェックセンターの古田大輔編集長は「目を引く情報に触れた場合は公的機関や報道機関の情報も加味して真偽を判断し、確信が持てない時は拡散をしないでほしい」と呼びかけた(出典:20)。

生成AIによる偽動画や過去映像の転用

爆発が起きたイオンモール熊本を巡っては、自撮りする女性の背後で爆発が起きる映像や、建物が倒壊し「Pray for Japan」と添えられた映像がSNSに投稿された。国立情報学研究所の越前功教授はFNNプライムオンラインの取材に対し、両映像を「明らかにAIで作られたものと考えていい」と判定し、根拠としてパン前後での路面の変化、逆歩行の不自然さ、消防車の色の違いを挙げた(出典:21)。YouTubeでも、報道機関のニュースを装う生成AIによる偽動画が投稿され、NHKの取材によれば数万回再生されている(出典:22)。

FNNプライムオンラインは、地震発生時の映像として投稿された、季節に合わないコートを着た人々が映る映像について、過去の冬季の震災映像を転用したものとみられると報じた(出典:21)。スペクティ社の分析によれば、イオンモール熊本の動画としてXに投稿された映像の一部に、2024年の能登半島地震の際に富山県の商業施設で撮影された映像が含まれていた(出典:15)。NHKの取材でも、Xやスレッズで能登半島地震時のショッピングモールの映像を今回の地震のものだとする偽情報が確認されている(出典:22)。

スペクティ社によれば、今回の地震で特徴的だったのは、生成AIの回答を根拠に、本物の可能性が高い現場の映像を過去のものだと断定して広める動きだったという(出典:26)。

Xでは、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したとする投稿が相次いだ。NHKの取材に対しJR九州は「『ななつ星』が脱線したという情報は入っていない」と否定し、「正しい運行状況はホームページなどで確認してほしい」と呼びかけた(出典:19)。産経新聞は、この投稿について八代駅付近の貨物列車の事案と混同したとみられると報じている(出典:26)。

NHKの取材によれば、海外で撮影されたライオンの画像を使い「地震のせいで動物園からライオンが放たれた」とする偽情報が一時投稿され、その後削除された(出典:19)。

総務省の注意喚起投稿のリプライ欄には、イオンモール熊本の爆発について「何者かが意図的におこなったものとしか思えません」とする投稿が寄せられ、コミュニティノートが付与された(出典:3)。リスク対策.comの取材に対し、Japan Nexus Intelligenceの竜口七彩氏は、陰謀論的な情報を発信しているアカウントから、被害の原因をミサイル攻撃や核攻撃ではないかと疑う投稿も拡散していると述べている(出典:16)。

偽の救助要請・送金要求や敵意を煽る投稿

28日夜遅く、Xで「助けてください。生き埋めになっています」といった救助を求める投稿があり、NHKの取材によれば30万回以上閲覧されたが、記載されていたのは実際には存在しない住所だった。投稿したアカウントはその後、閲覧できなくなる措置が取られたとみられる(出典:22)。スペクティ社の分析によれば、文面や住所がほぼ同一で名前だけが異なる偽の救助要請が複数のアカウントから発信されていたほか、被災者を装いQRコードで送金を求める投稿も確認された(出典:15)。同社はこの手口について「消防や警察の救助リソースを消耗させる、影響の大きい行為」と述べている(出典:26)。竜口氏は、7月29日午前8時までの時点について「救助に関して目立った投稿は見つかっていません」と述べる一方、地震の被害情報の投稿に「返信」する形でPayPayでの送金を求める投稿を確認したとしている(出典:16)。

NHKの取材によれば、Xやスレッズでは「外国人が引火させた」とする根拠のない主張も確認されている(出典:22)。

またリスク対策.comの取材によれば、竜口氏は、国外アカウントによる被害誇張を含む投稿や、コミュニティノートが付与された後も拡散が続く投稿、地震前に投稿された特定の宗教を非難する内容が掘り起こされて拡散するケースを確認したと述べている(出典:16)。地震前投稿の掘り起こしの一例として、「避難所で豚汁を止めよう」との言説がスレッズに投稿された。個人ブログ「電脳塵芥」を運営するnou_yunyun氏は、元ネタは地震前の7月26日の投稿とみている。同氏によれば、発信アカウントは1日40件程度の政治的傾向を持つ短文を投稿しており、反イスラムの文脈の投稿や、LINEオープンチャット・noteへの誘導、「月100万円」といった情報商材的な訴求が見られるという(出典:17)。

政府・プラットフォームの対応

総務省は28日、公式Xで「SNS等のインターネット上で、科学的根拠のない言説等の真偽不明の情報が流通するおそれがあります」と注意喚起を投稿した(出典:3)。ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)も同日、公式Xで生成AIによる偽画像や過去の画像を用いた偽・誤情報への注意を呼びかけた(出典:13)。

総務省は29日午前10時30分現在の第8報で、Google・LINEヤフー・Meta・X・TikTokの主要5社に対し、利用規約等を踏まえた適切な対応を行うよう要請を実施したと公表した(出典:4)。同第8報、7月30日午前6時現在の第10報、7月31日午前7時現在の第14報のいずれにも、記載されているのは要請を実施した事実のみで、2024年の能登半島地震で総務省が実施したような投稿削除・アカウント停止件数等の報告徴収に関する記載も、要請を受けた5社の対応内容の記載もない(出典:4, 5, 6, 27)。

官房長官は28日18時47分の記者会見で「災害の際には、インターネット上で真偽不明の情報が流通することがあります…悪質な虚偽情報の流布は決して許されるものではありません」と述べた(出典:7, 8)。29日午前11時18分の会見では「今般の地震に関しましては、インターネット上などで虚偽の情報もやはり見られております」と述べた(出典:8)。

国立情報学研究所の越前功教授はFNNプライムオンラインの取材に対し、惑わされないための注意点として「信頼できる情報源を探し、本当かうそか判断することが非常に重要。ファクトチェックの団体の情報もちゃんと見ながら」判断するよう助言した(出典:21)。竜口氏も、投稿の日時が地震後かどうか、投稿者のプロフィールに突飛な記載がないか、実際にその地域にいる人と判断できるかを確認し、迷うなら拡散しないよう呼びかけている(出典:16)。

ITmedia NEWSの取材によれば、X上では「おすすめ」欄が災害時の情報収集に役立たないとの不満がユーザーから相次いだ。X社日本法人の松山歩代表取締役は「フォロー中」タイムラインの利用と、投稿の表示順を「新しい順」にするよう呼びかけている(出典:23)。

今回の地震に乗じてSNS上に拡散した偽情報・デマの件数や規模について、総務省の被害状況等の報や7月28日・29日の官房長官記者会見で集計等の情報は示されていない(出典:4, 5, 6, 7, 8)。拡散規模として挙げた数値は、個別の投稿の閲覧数・再生数である*2

便乗詐欺・悪質商法への注意喚起

国民生活センターは、地震発生から約30分後に公式Xを更新し、災害に便乗した悪質商法への注意を呼びかけた。弁護士JPニュースの報道によれば、住宅修理に関するトラブル、保険金利用をうたう勧誘、義援金詐欺の3類型を挙げ、クーリングオフ制度の利用や消費者ホットライン(188)・警察相談ダイヤル(#9110)への相談を案内している(出典:24)。

警察庁(災害情報専用アカウント)は29日、公式Xで「震災に便乗した悪質事犯に注意」として、公的機関等をかたる義援金名目や、被災者宅を訪問して家屋修繕等をうたう、震災に便乗した悪質な事案の発生が懸念されるとして注意喚起を行った(出典:9)。西日本新聞の報道によれば、福岡県警生活安全総務課も29日、熊本地震に伴う義援金詐欺の発生を予想し、防犯メールで注意を呼びかけた。公的機関が電話で義援金を求めることはないとして、電話でお金を要求された場合はすぐに電話を切り、家族や警察に相談するよう求めている(出典:25)。

熊本県は29日、公式Xで正規の義援金口座の開設を発信した(出典:10)。

参考情報

政府・自治体・関連機関

学術機関・ファクトチェック機関

分析企業・専門家による独自検証

報道

比較資料(過去の災害)

(日付は公開元のものを記載しているため、現地時間等でずれている可能性があります。)

更新履歴

  • 2026年7月31日 AM その後確認された偽情報等のほか、総務省被害状況等の報の確認範囲(第14報まで)を追記
  • 2026年7月30日 PM 新規作成

*1:閲覧数はNHKが2026年7月28日20時05分時点(出典:19)、読売新聞オンラインが同日21時15分時点(出典:20)として報じたもので、取材主体と時点が異なる。

*2:SNS・動画共有サービス上で表示される閲覧数・再生数は取得時点のスナップショットであり、政府・公的機関による公式集計ではない。