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相場操縦容疑で摘発された国内証券口座のっとり事案についてまとめてみた

2025年11月28日、証券口座の不正取引へ関与した容疑で不正アクセス禁止法違反と金融商品取引法違反の容疑で男二人が逮捕されました。ここでは関連する情報をまとめます。

取引記録から不審な証券口座を特定

  • 警視庁などの合同捜査本部の捜査を受けて、逮捕されたのは中国籍の男二人(会社経営者と職業不詳)。容疑は不正アクセス禁止法違反と金融商品取引法違反(相場操縦)で、証券口座のっとりによる不正取引に関係した摘発は初めて。*1
  • 男二人は他の人物と共謀し、2025年3月17日に不正に入手したIDなどを用いて10都道府県の10人の証券口座を乗っ取り、東証スタンダード上場の人材開発企業の株を不正に釣り上げるために大量の売買を行った疑いがもたれている。警視庁は男らの認否について明らかにしていない。
  • 証券会社に記録された不正取引に使用されたIPアドレスを基に使用者情報を照会したところ、事案と直接関係のない住居やスマートフォンが接続元となっており、犯人が踏み台として使用した可能性が指摘されている。*2
  • 警察による捜査と並行して、証券取引等監視委員会は、不正に高騰した株を売り抜けた口座がないかを調査し、数十口座を特定して警察(警視庁・9府県警)に情報提供を行った。警視庁が約10口座の家宅捜索や事情聴取を進めた結果、多くが闇バイトによる口座提供や、儲け話を持ちかけられて貸与された口座であることが判明。捜査の過程で貴金属輸出入会社名義の口座が浮上し、男らの摘発につながった。*3
被疑者摘発までの流れ

2時間で行われた260万株の不正取引

  • 不正取引には乗っ取られた被害者口座と、男が経営する貴金属輸出入会社「L&H」名義の証券口座が用いられていた。
  • 男らは3月6日頃から証券口座への不正アクセスを開始し、12日以降は被害口座内の株式を売却。さらに、同口座に紐づく銀行口座へ3,000万円を入金し、買付資金として約1億円を準備した。その後、17日午後に会社名義の口座から一斉に買い注文を出し、約70万株を購入した。続いて会社名義口座で株価を下支えする買い注文を連続して発注し、乗っ取った9口座からは高値での買い付けが行われていた。こうした動きは「なれ合い売買」に該当するとみられる。*4。一連の不正取引は最初の買い注文を行ってから約2時間で完了していた。*5
  • 人材開発企業の株は低位株で値動きが激しく、一連の取引によって株価は 1日で84円から110円へ上昇。男らは事前購入分の約70万株を売却し、約860万円の利益を得たとされる。取引総量は約260万株に達し、乗っ取られた証券口座では合計約1,100万円の損失が発生した。*6 *7
  • 警視庁は、10人の証券口座の認証情報がフィッシング詐欺などで盗まれた可能性を視野に捜査しており、実際に一部の被害者はフィッシング被害に遭った心当たりがあるという。*8 全国からの被害相談件数は2024年12月から2025年10月にかけて3591件に上っている。

不正取引は他グループも関与か

  • 今回摘発で取引されていた企業とは別に、100社以上の株が不正に取引されていた疑いがあるほか*9、この事案と同月に会社経営の男の口座に少なくとも数千万円の振り込みが別の金融機関の口座から行われていた。*10 一連の事案の関係者が他にもいた可能性を含め、摘発した男らの通信機器の履歴を調べるなど、警察が引き続き捜査にあたっている。
  • 報道されている3月17日の不正取引対象となった企業名は報じられていないが、同日に近似する動き*11となっていた企業の株取引において、その後も断続的に取引の出来高がスパイクしている日が発生していた。不正取引との関係性は明らかではないが5月16日には2500万株を超える出来高となっており、SNSでは不正取引を疑う投稿が複数行われていた。
報道と近似した取引が行われていた企業の株チャート(Kabutanより)

参考情報

piyolog.hatenadiary.jp

更新履歴

  • 2025年12月6日 AM 新規作成