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保険証情報の流出についてまとめてみた

2015年12月30日、報道各社が健康保険証などの個人情報が流出し、一部名簿業者に転売されていたとして報じました。ここでは関連情報をまとめます。

タイムライン

日時 出来事
2008年12月 (取材に応じた)名簿業者がブローカーより当該リストを買収
2015年12月21日 共同通信が当該名簿を入手?(写真に記載された日付より)
2015年12月30日 健康保険証等の情報を含むリストが流出していると報じられる
2016年1月31日 厚生労働省が保険証番号変更を可能とする方針と報道。*1
2016年5月31日 厚生労働省の調査結果発表、各保険組織に対して番号変更等を依頼。

健康保険証等の個人情報リスト

  • 約10万3千人分の個人情報がリストに掲載されていた。
リストに含まれていた情報
  • 氏名
  • 性別
  • 生年月日(一部)
  • 住所(一部)
  • 電話番号
  • 保険種別
  • 保険者番号
  • 被保険者の記号番号

他確認されていた項目*2

  • 老人保険(当時)区分
  • 生活保護等の公費負担を示す3つの欄
名簿に含まれていた対象者
  • 名簿に記載されていたのは2005年3月以前に生まれた人。
  • 後期高齢者医療制度に基づく番号体系が付与されていなかった。同制度は2008年4月より開始されている。
  • 取材に応じた27世帯44人すべてで氏名や住所等一致(実在)することが確認された。
  • 保険証番号が一致したのは6世帯11人であり、転職などで変更した影響と思われると報じられている。*3
  • 保険者番号をもとに、加入先は800〜900確認されている。*4
流出が確認されている都道府県

明らかになっている都道府県別流出の状況は次の通り。近畿方面に偏りがみられる。*5 *6 *7

都道府県 流出が確認されている件数 大量流出エリア
埼玉県 30件  
千葉県 36件  
東京都 93件  
神奈川県 55件  
福井県 19件  
長野県 4件  
岐阜県 18件  
石川県 7件  
富山県 4件  
静岡県 24件  
愛知県 43件  
滋賀県 24,322件 あり
京都府 2,987件 京都府南部
大阪府 36,890件 摂津市
兵庫県 8,178件 あり
奈良県 25,381件 あり
和歌山県 674件  
三重県 101件  
徳島県 4,025件 徳島県西部
香川県 26件  
沖縄県 0件  
その他 168件
合計 103,111件

以下は件数がまだ報じられていない179件の都道府県。
北海道、青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県
茨城県、栃木県、群馬県新潟県山梨県鳥取県
島根県岡山県、、広島県山口県愛媛県高知県、福岡県、大分県佐賀県長崎県熊本県、宮崎県、鹿児島県

共同通信の分析によれば、多数の個人情報が掲載されていた市区町村は滋賀、大阪、兵庫、奈良の7市区、京都府南部、徳島県西部。以下は明らかにされている市町村名。*8

流出により想定される被害

  • 本人に成りすまして保険証が再発行される。
  • 偽装して入手した保険証を使って詐欺や借金などの悪用が可能。

なお、厚生労働省によれば現時点でこれまで悪用された事例は確認されていない。

流出元に関する情報

以下の状況証拠から病院、薬局等の医療機関から漏れた可能性がある。

  • 複数の保険の運営主体(国保や健保など)が含まれていた。*10
  • 健康保険証以外の個人情報(個人の電話番号など)も含まれていた。

取材に応じた名簿業者

  • 2008年12月にブローカーより買収、危険なデータと知りつつ一部は顧客に販売したと取材へコメント。*11

当該事案に対する対応

◆情報の真偽を調査
 
 厚生労働省保険局総務課の話 医療機関や薬局が業務で作ったリストが流出したか、何者かが個人情報を悪用する目的でリストを作り、流出させた可能性がある。真偽を調査する。個人情報保護法に基づく厚労省ガイドラインでは、医療機関などが本人の許可なく第三者にデータを提供することを禁じており、今回の流出はガイドラインに抵触する可能性がある。

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015123002000061.html

謝辞

このまとめは次の方より頂いた情報を元に修正を行っています。ありがとうございます。

更新履歴

  • 2015年12月30日 PM 新規作成
  • 2015年12月31日 AM 他確認されていた項目を修正、タイトルが誤解を招きそうなので修正、都道府県別一覧を修正
  • 2015年12月31日 PM ご指摘いただいた誤植個所(後期高齢者医療制度の開始時期)について修正
  • 2016年2月1日 PM 最新情報を反映
  • 2016年5月31日 PM 厚生労働省の調査結果のリンクを追記

*1:保険証番号 変更可能に 10万人超情報流出で対応,東京新聞,2016年2月1日アクセス:魚拓

*2:保険証情報10万人分が流出 病院、薬局リストか,中日新聞,2015年12月30日アクセス:魚拓

*3:保険証情報10万人超流出 厚労省調査 詐欺など悪用の恐れ,東京新聞,2015年12月30日アクセス:魚拓

*4:保険証番号の変更可能に 厚労省、情報流出問題に対応,日本経済新聞社,2016年2月1日アクセス:魚拓

*5:健康保険証情報、10万3000人分が流出 一部は住所、電話まで…名簿業者が転売、大阪は3・7万人も,産経ニュース,2015年12月30日アクセス:魚拓

*6:健康保険証情報10万3000件流出 番号・氏名…名簿業者が転売,産経新聞,2015年12月30日アクセス:魚拓

*7:保険証番号の変更認める 厚労省、情報流出の数万人対象,中日新聞,2016年2月1日アクセス:魚拓

*8:厚労省が情報流出の本格調査開始 警察にリスト提出へ,共同通信,2015年12月30日アクセス:魚拓

*9:情報流出に注文や不安 「国の責任で調査を」,共同通信,2015年12月30日アクセス:魚拓

*10:健康保険証の個人情報、10万3千人分が流出か,読売新聞,2015年12月30日アクセス:魚拓

*11:保険証情報10万人分が流出 病院、薬局リストか,中日新聞,2015年12月30日アクセス:魚拓

*12:厚労省が情報流出の本格調査開始,共同通信,2015年12月30日アクセス:魚拓