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2025年4月6日、中日本高速道路（NEXCO中日本）は、同社管内の一部料金所のETCレーンがシステム障害によって通行できない状態となったと公表しました。ETCのシステム障害は38時間後の翌日4月7日午後に復旧しています。この障害の影響により、高速道路では料金所周辺で渋滞や関連するとみられる事故も複数発生しています。ここでは関連する情報をまとめます。

初めて起きたETCの広域システム障害

ETCの制御設備においてシステム障害が発生したのは2025年4月6日0時半頃。その後も4月7日1時半頃まで影響を受ける料金所が増えていった。このシステム障害により、高速道路出入口でETCによる課金処理を行うことができず、ETCレーンの通行が行えない状況となった。
システム障害が復旧（応急復旧）したのは発生から約38時間後にあたる2025年4月7日14時頃で、停止されていたETCでの運用が再開し全車両の通行が可能となった。2005年の道路公団民営化以降、NEXCO中日本管内で起きた大規模なETCのシステム障害はこれが初めてと同社は言及している。*1
システム障害の影響が及んだのはNEXCO中日本管内1都7県（4/6は東京都、神奈川県、静岡県、山梨県、愛知県、三重県、岐阜県、4/7は長野県にも影響拡大）の17路線106か所の料金所（同社は管内で23路線、料金所310か所を運営）。同社が公表したETC停止または閉鎖された道路、料金所は以下の通り。

料金所周辺で渋滞、追突事故も発生

ETCレーンの通行が行えない状態のため、料金所周辺などで渋滞が発生した。NEXCO中日本や報道では次の渋滞が発生していたことが明らかにされている。*2 *3 さらに高速道路のトラブルを受けたものとみられる一般道での渋滞も発生したことが報じられた。*4 *5 NEXCO中日本は、その後とりまとめた報告において、2㎞以上の渋滞が10か所発生したことを明らかにしている。

発生日時	発生道路・箇所	渋滞の長さ
2025年4月6日10時頃	中央自動車道下り線三鷹料金所	約4㎞
同時刻	東名高速上り線東京料金所	約1㎞
2025年4月6日11時10分頃	中央自動車道上り線八王子料金所	約7㎞
2025年4月6日12時頃	東名高速音羽蒲郡IC出口（上り）	約6㎞
2025年4月6日13時半頃	中央自動車道河口湖IC出口付近	約2㎞

障害時間帯には高速道路上で事故も起きており、東名高速、中央道で合わせて9件が確認されている。NEXCO中日本は「料金所渋滞で若干出ていると聞いている」として、関連事故が複数発生したとの見方を会見で示すも「正確な件数は把握していない」「事故原因については差し控える」と述べており、検討委に提出された報告資料においても事故状況については触れられていない。*6 *7 報道で取り上げられていた事故は以下の通り。

発生日時	発生場所	事故内容
2025年4月6日 9時30分頃	中央自動車道八王子料金所手前上り線	システム障害の影響を受けた料金所周辺で渋滞により生じたとみられる事故が2件発生した。*8
2025年4月6日 10時頃	中央自動車道三鷹料金所手前下り線	システム障害の影響を受けた料金所周辺で渋滞により生じたとみられる事故が1件発生した。
2025年4月6日12時20分頃	東名高速豊川IC付近	システム障害により生じた渋滞を避けようとしたトラックへ車線変更をした際に右車線前のミニバンに追突、横転し計5台が関係する玉突き事故が発生。一人が足の骨を折る重傷で子供2人を含む男女合わせて8人がけが。三ケ日ジャンクションから豊川IC間が通行止め。9 10
2025年4月6日16時まで	愛知県内高速道路	システム障害により4件の事故が発生したと愛知県警高速隊が取材に回答。

物流事業者（ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便）では2025年4月6日夜時点で遅配などの影響は出ていなかったが、セブンイレブンジャパンは障害影響により、東海地方一部店舗への午後便で納品遅延が生じた。また通行料金の精算に関して西濃運輸は規模や方法についてNEXCO中日本と協議を行うなど、事後精算についての懸念を持つ事業者もいた。*11 *12 *13

料金所ごとの対応、全体での判断遅れ

NEXCO中日本は、ETC故障時のマニュアル（料金所内での対応）や災害を想定したBCPの用意はあったが、今回のような広域でのETCシステム障害を想定した整備をしていなかったと説明しており、そのため各料金所での順次対応となってしまい、判断が遅れたとしている。*14 *15 障害発生直後から半日ほどは1台ずつ料金所で車を停止させる対応がとられており、これにより料金所周辺の渋滞発生につながったとみられる。また対応も各料金所で異なっていたとみられ、通行券を用いた一般レーンでの精算を求めるものや、事後精算の期限にかかる説明が適切ではないチラシを配布するなど行われていた。*16
ETCのシステム障害のせいで酷い目に遭ったよ。
ていうか、料金所の係員がやってたのはこのチラシを一台一台渡していただけで結局は後日精算なんだから、レーン解放すりゃ良いのに。 pic.twitter.com/Nje11u3crN
— 竹雲⭕️ (@chikun_) 2025年4月6日

障害発生直後	一般レーン（現金支払い）への誘導やETCレーン入口で自動車を1台ずつ停止させ、支払い用紙を渡し精算を指示する対応。17 18
障害から約1時間後	ETCレーン入口で自動車を1台ずつ停止させ、通行券を配布し一般レーン出口での精算、またはQRコード付きの後日精算を説明するチラシを配布する対応を開始。*19
障害から約13時間後	ETCレーンの発信制御バーを常時開放し、自動車を停止させずに料金所を通過させる対応。（チラシ配りは開放直後も行っていたが、渋滞解消せず声掛けなしの対応に変更。）

障害発生中の料金支払いについて、一部の利用者からは「支払うべきものなのか」とする声があるも、NEXCO中日本は高速道路の利用料として徴収されるもので法律によって規定されており、JRの特急料金のような所要時間の保証については行っておらず、今回のシステム障害を受けた減額、免除もしない方針であると記者会見にて明らかにしている。*20 なお、これまで通り走行状況などによる割引の適用は事後精算でも行われるとしている。*21 *22
支払期限についても混乱が見られ、後日精算として配布されていたチラシには2日（または7日）以内に支払うよう説明があったが、NEXCO中日本は取材などに対し、支払い期限の記述はお願いベースであって厳密な期限を定めたものではないと説明。また銀行への振込手数料についても同社が負担するとした。*23
【後日精算チラシに関するお詫びとご案内】
この度は弊社管内において、ETCシステム障害によりお客さまには大変ご迷惑をおかけしております。…
— NEXCO中日本金沢支社 (@c_nexco_kana) 2025年4月7日
システム障害中は高速道路の出口が解放された状態にあったことから、事後精算を行うことに関して利用者の善意に任されている状況で、出口の状況はカメラで記録されているも個別の請求については方針を未定としている。*24NEXCO中日本は通行記録の精査中として影響を受けた車両数や徴収すべきであった料金総額については明らかにしていないが、事後精算の申し出は2025年4月8日時点で約2万4000件、10日後にあたる4月18日時点で約3万6000件を受けていると同社は明らかにしている。しかし、実際に高速道路を利用した車両との乖離は相当あるとみられており、NEXCO中日本は特定ができれば請求を今後行う可能性もあると言及している。*25 *26
事後精算はNEXCO中日本のWebサイトより、利用区間、日時、ETCカード番号情報、車両番号、車種などを入力する必要がある。精算については、申出内容を確認し手続きを行うとして時間を要すると2025年4月12日時点では案内を行っている。

混乱を招いたとして、利用料金還元を公表

NEXCO中日本は、システム障害発生時における高速道路の利用料金について、多大な混乱を招いたとして、その重大性にかんがみて利用料金の還元を行うと公表した。一部料金所でETCの無線通信が継続して行われており、課金データも正常であったことから、該当する利用者に対してはカード会社などを通じて請求が進められており、これらを還元する。また支払い手続きの申し出を行っていない利用者に対しても利用料金の請求を行わないことを公表した。
すでに支払いが行われている利用料金に対しては、支払い方法などに応じて同額のETCマイレージサービス還元額付与、請求額減額、クオカードの送付をもって還元を行うとしている。クオカード送付の対象となった利用者に対しては、Ｗｅｂサイト上に申請画面を用意するとして、準備ができ次第必要情報の入力を行うよう案内を行っている。

想定が外れた障害原因、暫定措置で応急復旧

システム障害は広域管理システムより自動配信される際にETC課金に必要なデータが破損していたことによりデータ不整合が生じたため起きていた。データが破損する原因については2025年4月18日に公開した資料で明らかとされており、これについては後述する。NEXCO中日本はデータの破損が発生しないよう、暫定対応として手動（配信都度のメモリ消去）での配信へ変更しており、完全な復旧には至っていない。外部からのサイバー攻撃の可能性については当初視野に入れたものの痕跡はないとして同社は否定している。*27
NEXCO中日本は発生当初、障害直前の2025年4月5日に行った地域管理システムへの改修作業が関係していると考えており、2025年4月6日は改修前のプログラムに差し戻すロールバックを復旧作業として行っていた。この作業は同日18時までに完了し、ETC課金に必要となるデータを手動にて試験配信し、料金所で障害が発生しないことを順次確認していた。国土交通省に対しても改修作業が関係していると報告を行っていたが、その後この更新作業自体は今回の障害と無関係であったと発表した。*28 *29 なお、他社も同様に改修作業を行っていたが、今回のような問題は生じなかった。*30
毎日0時に行われる広域システムからの自動配信は2025年4月7日も配信されてしまい、その結果長野県にも障害による影響範囲が拡大した。*31 NEXCO中日本がこの問題に気付いたのは2025年4月7日3時過ぎで、ロールバック後も料金所システムなどのログよりデータ不整合が生じていたことを確認した。*32
今回不具合が起きたシステムは、2025年7月頃の開始を予定している通行料金深夜割引の見直しに向けて2024年夏に導入されたもので、2025年1月より試験運用を行っていた。*33 開発や運用にかかわっていたシステム会社については、NEXCO中日本は原因が特定できていないことを理由として開示を控えた。*34
破損が起きたデータは、ETCカードが使用可能かを判定するために使用されていたもので、正常時は宛先データとETCカードの判定データが生成され、最終的に料金所にあるサーバーまで送信される。宛先データは送信後に自動的に消去される必要があったが、広域管理システムにはこの宛先データを削除する機能が装備されておらず、結果として消去されるべき前回送信分の宛先データを残したまま、新たに宛先データとETCカードの判定データを送る挙動を行っていた。各々のデータ格納をする情報領域が定まっていたため、前回配信分も含められた2回分の宛先データがETCカードの判定データを一部浸食してしまい、データ破損が起きる状況となった。

再発防止に向け検討委立ち上げ

国土交通大臣は、NEXCO3社（NEXCO中日本主導）の検討委員会（広域的な ETC システム障害発生時の危機管理検討委員会）を立ち上げ、2025年4月中に原因、当面の対策について報告をするよう要求したと説明。さらに再発防止策、広域システム障害の対応マニュアルなどは2025年6月中にまとめるよう要求。
検討委員会には有識者3名（名古屋大中村教授、明治大菊池専任教授、むすび法律事務所伊藤弁護士）も参加し、広域システム障害を想定したマニュアル策定、障害発生時の料金徴収の在り方などについて議論が進められた。*35
- 広域的なETCシステム障害発生時の危機管理検討委員会
2025年6月に、NEXCO3社にてとりまとめられた再発防止策及び広域障害発生時の危機管理マニュアルを公表。交通渋滞等を起こさないよう、現場で即時必要な対応を行うとともに、広域障害発生時は料金を徴収しない無料措置とする扱いとなった。

日時	出来事
2025年4月6日 0時	ETC広域管理システムから（障害につながる破損した）データを自動配信。
同日 0時半頃～	システム障害によりNEXCO中日本管内の一部料金所でETCレーンが動作しない事象が発生。
同日 5時頃	4月5日のシステム改修作業が原因と想定し、ロールバック作業を開始。
同日 5時30分頃	NEXCO中日本が管内の一部料金所でETC利用不可となっていると公表。
同日 14時頃	障害が起きているETCレーンを開放し料金所通過対応を開始。
同日 18時頃	システム改修前のプログラムへロールバック作業が完了。手動でデータを配信し、料金所でも障害解消を確認。
同日 18時30分頃	NEXCO中日本が記者会見。障害原因が4月5日に行ったシステム改修の可能性があると言及。
2025年4月7日 0時	ETC広域管理システムからデータを自動配信。
同日 0時30分頃	システム障害の影響が拡大。
同日 3時頃	NEXCO中日本が自動配信されたデータに破損があることを確認。
同日 11時頃	NEXCO中日本がデータ配信を自動から手動に変更。
同日	官房長官が障害について記者会見で言及。国交省より再発防止に向けた指導を行うと説明。
同日 14時頃	応急復旧が完了しETCレーンでの通行（精算処理）が可能に。
2025年4月8日	国土交通大臣が障害について遺憾の意を表明。原因究明、再発防止をNEXCO中日本へ指示。*36
2025年4月9日	NEXCO中日本が記者会見。同社社長がシステム障害発生について謝罪。広域のシステム障害を想定したマニュアル整備を行っていなかったと言及。*37
2025年4月10日	国土交通大臣とNEXCO中日本社長が面会。*38
2025年4月11日	国土交通大臣が障害を受けNEXCO3社の検討委を立ち上げすると報告。またNEXCO中日本に対して原因、対策について報告をするよう要求したことを説明。
2025年4月18日	第1回検討委員会を開催。NEXCO中日本が事故原因について報告。
2025年4月22日	第2回検討委員会を開催。NEXCO3社においてETC障害における当面の対策を公表。
2025年5月2日	NEXCO中日本が障害発生時における利用料金還元を公表。
2025年6月23日	第3回検討委員会を開催。NEXCO3社より再発防止策および危機管理対応マニュアルを公表。