piyolog

piyokangoの備忘録です。セキュリティの出来事を中心にまとめています。このサイトはGoogle Analyticsを利用しています。

流出NEMの不正交換事案についてまとめてみた

警視庁は2020年3月11日、Coincheckから約580億円相当のNEMが流出した事件で、流出したNEMであると知りながら交換に応じたとして男二人を組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕しました。ここでは関連する情報をまとめます。

初めての摘発

f:id:piyokango:20200312070225p:plain
事案概要図

  • 警視庁に逮捕されたのは大阪府の男、北海道の男の二人。
  • 容疑は組織犯罪処罰法(犯罪収益収受)。Coincheckから流出したNEMであることを知りながら別の暗号資産の交換に応じた疑い。
  • CoincheckからのNEM流出事件に関連する逮捕は今回が初めて。
  • 大阪府の男は200回以上*1に分けてNEMの交換取引を行っていた。
  • 男二人は取得したNEMを国内外の取引所でビットコイン等の他の暗号資産に交換し、差益(億単位)を得ていた可能性がある。*2
逮捕された男 交換したNEM 逮捕後供述
大阪府の男 約2,400万XEM(当時レート20数億円)
流出したNEMの約5%にあたる
儲けるチャンスと思った等*3
容疑を認める供述
北海道の男 1億数千万円相当 何も話せないと供述
  • 2020年4月13日には大阪府の男を再逮捕する方針とも報じられている。
送金先口座から特定
  • 流出NEMの一部が国内外の取引所へ送金された事実を確認。*4
  • 暗号資産交換業者へ口座名義人を照会し、交換に関わった人物を特定。
  • 2019年11月末頃に交換に応じた男らの家宅捜索を行い、押収した資料の分析を進めていた。
流出に関わった人物は捜査中

警視庁は他の関係者の捜査も継続中。

  • 流出NEMの交換に応じた他の人物ら
  • Coincheckに不正アクセスを行うなどNEM流出に関わった人物

二人を起訴

  • 2020年4月1日に東京地検が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)で二人を起訴。*5
  • 2020年6月23日に北海道の男の初公判。弁護側は前提の流出実行犯が特定できておらず犯罪か不明の状態で犯罪は成立しないとして無罪を主張。*6

初の没収保全命令

  • 東京地裁が公判中の北海道の男に対し、組織犯罪処罰法に基づく保全没収命令を発令。命令は警視庁の請求を受けて2020年3月30日に出されたもの。*7
  • 暗号資産に対する命令は全国で初めてで、国内の交換所に預けられたNEM35万円相当が対象。(ビットコインなども含めた約480万円相当とも報じられている。)が対象。割安で取得し他の暗号資産への交換を通じ得た差益の一部となる。
  • NEMの大半は海外の交換所で保管されていることから対象資産が特定できなかった。
  • 裁判で有罪確定となった場合、国庫に対象の暗号資産が移される。
  • [PDF] 組織的犯罪処罰法における没収等について

同事案で29人を立件

  • 警視庁サイバー犯罪対策課は組織販売処罰法違反(犯罪収益の収受)の容疑で先の2人を含む31人を立件したことが報じられた。*8
  • 31人の内訳は、6人が逮捕、25人が書類送検。東京都、大阪府、広島県など13都道府県の23~43歳の男。*9
  • 交換されたNEMは総額188億円。最小額は約3000円、最多は約67億円。 *10
  • いずれも盗まれたNEMであることを知りながら別の仮想通貨へ交換を行ったことによるもの。(2018年2月7日~3月22日)主犯は含まれていない。
  • これ以外の交換されたNEMについて、大半が海外への流出であったため特定ができなかったケースがある。*11
  • 事項が迫っていることを受け、警視庁によるNEM交換人物の捜査は終結。流出に係った人物については捜査を継続。*12

更新履歴

  • 2020年3月12日 AM 新規作成
  • 2020年6月23日 PM 続報反映
  • 2020年8月22日 AM 続報反映
  • 2021年1月22日 PM 続報反映(通貨交換者への捜査終結)